『ケス』等の作品で有名なケン・ローチの監督作ということでチョイス。

結果、これは当たりだった。

「天使の分け前」のあらすじ

長引く不況で若者たちの多くが仕事にあぶれるスコットランドの中心都市グラスゴー。教育もままならない環境に生まれ育ち、親の代から続く敵対勢力との抗争が日常と化した日々を送る青年ロビー。彼はカッとなると暴力衝動に身を委ねてしまう。今回もまたトラブルを起こして警察ざたに。刑務所に入るかと思われたが、恋人との間にできた子どもがまもなく出産時期を迎えることに免じ、裁判所から300時間の社会奉仕活動を言い渡された。そこで出会ったのは、同じく社会奉仕を命じられた男女3人の若者と、彼らの指導にあたるウイスキー愛好家の中年男ハリーだった。ハリーからスコッチウイスキーの奥深さを教わり、テイスティングの才能が開花しその魅力に目覚めていく。だがこれまでの所行からまともな職も望めず、このままでは折角得た家族も失いかねない彼が賭けに出る。

恵まれない環境で育った主人公が、ある人との出会いで、才能を開花させていくというサクセスストーリー。
そこに、スコットランドという独特の地域性、その名産物であるスコッチウイスキーというエッセンスが加わり、まさに味わい深い作品となっている。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

 - ad -

TASC(Talk After Serious Crime)という、重大な犯罪の後に被害者と話をする会があり、ロビーも妻に促されて参加する。
ロビーに暴行を受けた男性は未だに障害が残っているなど、収監されれば罪がなくなるわけではないことも、ケン・ローチはしっかり描いている。
theangelsshare_04
右が、昔暴行を受けた男性。
なお、左の男性は被害者の父親役だが、元プロサッカー選手のアンディ・マクラーレンという人が演じているそう。

 
社会奉仕活動でロビーが知り合った3名の男女。
ロビー同様、彼らも欠けている部分が大きく、ロビーは彼らとつるまないほうがいいのではないかと無意識に思ってしまう。
特に、ラスト近くまで来ると、だいぶロビーが更生してきている感じがするからなおその思いは強くなる。

theangelsshare_02
愛すべきバカ。この直後、貴重なウイスキーの瓶を落として割ってしまう。
近くにいたら相当イライラさせられるだろう。

きっとこの3名のこれからの人生もいろいろと大変だろうし、分け前の2.5万ポンドもさっさと使ってしまいそうではある。
しかし、観終ってあらためて考えると、それはそれでこの作品としてはおさまりが良い気もする。

 
印象的なシーンの一つとして、警察による身体検査のシーンがある。
theangelsshare_01
男だけというのはまだいいとしても、手探りもせず前後スカートを上げさせるだけという、なんとも牧歌的な検査。

ウイスキーを盗むシーンや、ウイスキーコレクターのタデウスと交渉して10万ポンドを手にするシーンにおいてもそうだが、全般的に「これはピンチ!」と思わせる場面でも演出が抑え目で、焦燥感もなく、のどかな雰囲気。ここにケン・ローチ節を感じる。

これはこれで悪くはないと思うが、もう少しメリハリが効いていたほうが、ラストでの喜びも大きくなるかなという気がしてならない。

なお、スコットランド伝統のこの衣装もそうだが、後半で手にしたお金でロビーが買った車が水色のワーゲンのミニバスだったりするなど、ちょいちょい可愛らしい要素が入っている映画でもある。

 
ウイスキーの香りを表現したり、違いを見分けたり(飲み分けたり?)、単なる趣味といえばそれまでだが、何となく高尚なものを勝手に感じてしまう。
theangelsshare_03
こういうシーンに、ついつい文化的豊穣感を感じてしまうのだ。
グラスゴーやエディンバラと言った、子どもの頃から何となく憧れていた、スコットランドの街が舞台というのも拍車もかけているとは思うが。

ラストのハリーへのメッセージ。
“天使の分け前”をここで使うかー!
グっと来た。

奉仕活動監督のハリーしかり、ロビー夫妻に半年の間家を貸してくれる女性しかり、犯罪を犯した彼らも他の人の善意によって支えられていることがわかる。
その点でも、前向きな映画だ。

原題: The Angels’ Share
製作総指揮: パスカル・コーシュトゥー、ヴァンサン・マラヴァル
製作: レベッカ・オブライエン
監督: ケン・ローチ
脚本: ポール・ラヴァティ
撮影: ロビー・ライアン
美術: ファーガス・クレッグ
音楽: ジョージ・フェントン
編集: ジョナサン・モリス
出演:
ポール・ブラニガン/ロビー
ジョン・ヘンショウ/ハリー、奉仕活動監督者、ウイスキー愛好家
ゲイリー・メイトランド/アルバート、スキンヘッド、眼鏡
ウィリアム・ルアン/ライノ、長身
ジャスミン・リギンズ/モー、盗癖
ロジャー・アラム/タデウス、ウイスキーコレクター
シオバン・ライリー/レオニー、ロビーの妻
デヴィッド・グーダル/アンガス・ドビー、蒸留所のマネージャー
スコット・カイル/クランシー、ロビーに執拗に因縁をつけてくる
ギルバート・マーティン
フォード・キアーナン/駅のホームでふらふらするアルバートに対するアナウンスの声
チャーリー・マクリーン/ロリー、モルト・ミルをテイスティング
ジェイムス・キャセイ
スコット・ダイモンド/ウィリー
ジョイ・マカヴォイ/最初に訪ねた蒸留所の案内人女性
ロデリック・カウィー/アンソニー、昔にロビーから暴行を受けた被害者
リンジー・アン・モファット/レオニーとロビーに部屋を半年間貸してくれる
 
製作会社: シックスティーン・フィルムズ、ホワイ・ノット・プロダクションズ、ワイルド・バンチ
配給: エンターテインメント・ワン(英)、ロングライド(日)
公開: 2012年5月22日(仏CIFF)、2012年6月1日(英)、2013年4月13日(日)
上映時間: 106分
興行収入: $6,687,338
キャッチコピー: 「かけがえのない出会いとスコッチウイスキーがもたらす“人生の大逆転”!」
 
@Amazon Prime Video