theconformist
初めて目にした、ベルトリッチの監督作品。

1930年代後半から40年代前半にかけてのローマ、パリ、そしてサヴォイアの別荘へ向かう途中の暗殺の森が舞台。

主役のマルチェロ(ジャン・ルイ・トランティニャン)の特異性、ヒロイン二人の華やかさ、映像への強いこだわり、の三要素により個性的な仕上がりになっている。

ただし、いかんせん主軸となるストーリーに共感できず。要は、話として面白いかというと疑問。

その原因の一番は、自分にとってマルチェロという男が、共感できる対象ではなく、かといって嫌悪するほどの強いものも感じられない中途半端な存在だったからだろう。

以下、ネタバレも含め、印象に残った点を振り返る。

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上でも述べたが、ファシストに傾倒する、マルチェロのキャラクター設定が際立っている映画なのは間違いない。

自ら望んでファシストの秘密警察に入ってるのに、腹が座っていない。
終始格好だけつけている、情けない男。
護衛兼監視役であるマンガニエーロ(ガストーネ・モスキン)にも卑怯な奴と呆れられる始末。

ラストでも、ファシスト体制が変わるやいなや、今まで懇意にしていて、お世話にもなっていた盲目のイターロ(ホセ・クアーリョ)を侮辱するような態度。
しかも、特に深い考えがあってのことでもなさそうで、人間の浅はかさがにじみ出ている。
なかなかこういう奴をフィーチャーしているストーリーにはお目にかからない。
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冒頭近く、おそらくラジオの収録スタジオの別室でのマルチェロ。まだうぶに見える。普通の人になりたいがために結婚するのだと、イターロに話す。
このカットも撮影の構図がうまい。

ヒロイン二人はいずれも華やかで魅力的。
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メイドからマルチェロが買ってきた花を受け取るジュリア(ステファニア・サンドレッリ)。1940年前後の時代にしてこのファッション。部屋への光の入り方にもこだわりを感じる。

このシーン、買ってきた花を、マルチェロは最初メイドに手渡すのだが、イターロとの話では、マルチェロとメイドとは浅からぬ関係。マルチェロ曰く、彼女は「花嫁道具の1つ」だと。

教授の嫁のアンナを演じるドミニク・サンダは、この映画により日本での人気がかなり高まったとのこと。
マルチェロとジュリアが教授宅を初めて訪ねた際の、強気な雰囲気のアンナがめちゃくちゃ格好良い。
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歩く姿も、タバコを吸う姿も決まっていた。
ただし、このあとの彼女とはズレがあるように感じた。
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子どもにバレエを教えるアンナ。
教えているシーンに、なんだかわからないが違和感があった。

アンナとマルチェロは、てっきりもともと知り合いで、昔何らかの関係があったものと思い込んでいたが、そうではないようだ。

ジュリアには時代を超えて通用する可愛いらしさがある。
有名なシーンではあるが、特にアンナと二人でのダンスシーンで輝いていた。

アンナにせよ、ジュリアにせよ、控えめとは言い難い性格。
ぐいぐいマルチェロに攻めていく。
戦前の時代でも、ヨーロッパにはこういう女性が既に多く存在したのだろうか。
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クアドリ夫妻とパリの中華へ。あの時代にもこんなきちんとした中華料理屋があったことを知る。当時のパリに和食料理屋はなかっただろうなとふと思う。

 
脇役ながら良い立ち位置にいて、最終的には印象に残る役柄となったマンガニエーロ(ガストーネ・モスキン、写真右)。
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幸か不幸か”マンガニエーロ”という名前がコミカルさを誘う。

 
上で紹介したシーンもそうだが、映像、構図、ファッション、光のとりいれ方など随所にこだわりが感じられる。
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父親が入院している精神病院。空間のとりかた、衣装など変わっている点が多い。

クライマックスの一つであろう殺人シーンも普通ではない。
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今まで観たどんな殺人シーンよりも、静かで音の少ないナイフでの暗殺シーン。叫び声、うめき声も控えめ。

 
マルチェロが小さい頃に、いじめっ子から自分を救ってくれた運転手リーノ(ピエール・クレマン)からホモセクシャル的な行為をされていたり、それを結婚前に神父に告白すると神父が動揺したり、さらにはアンナとジュリアのレズビアン的なショットもあったりと、公開当時LGBT要素が話題を呼んだことは想像に難くない。

この映画は、説明描写が多い映画でもないので、当時のイタリア、フランスの政情について知っていたほうが、理解が早かっただろう。
自分は知識が乏しく背景を理解するまでに少し時間がかかってしまった。
例えば、ラスト近く、1943年にムッソリーニが失脚していたが、ここも私の歴史理解が足りずわかりにくかった。

この時代が舞台となっている映画を観るたびに思うが、当時の日本との違いがあまりに大きい。よく戦争で手を組んだものだ。

なお、原題の「Il Conformista」とは、体制に順応する人の意味。
邦題のほうが魅惑的ではある。が、内容を正しく表しているのは原題のほうだろう。

 
最後に、バージョン違いのチラシやDVDパッケージデザインを紹介。

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イタリア語の別バージョン。色数が多く、やわらかい印象。

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英語版。暗殺者風。

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フランス語版。どことなくオシャレ。

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日本語の完全版DVDパッケージ。クールな装い。

原題: Il Conformista
英題: The Conformist
製作総指揮: ジョヴァンニ・ベルトルッチ
監督: ベルナルド・ベルトルッチ
脚本: ベルナルド・ベルトルッチ
原作: アルベルト・モラヴィア
撮影: ヴィットリオ・ストラーロ
美術: フェルディナンド・スカルフィオッティ
音楽: ジョルジュ・ドルリュー
衣装: ギット・マグリーニ
出演: ジャン・ルイ・トランティニャン(マルチェロ・クレリチ)、ステファニア・サンドレッリ(ジュリア、マルチェロの妻)、ドミニク・サンダ(アンナ・クアドリ、クアドリ教授夫人)、ピエール・クレマンティ(パスクアリーノ・セミラマ、リーノ、子どもだったマルチェロに撃たれる)、エンツォ・タラシオ(ルカ・クアドリ教授、イタリアからフランスに亡命)、ガストーネ・モスキン(マンガニエーロ、特務情報員。マルチェロの護衛兼監視役)、イヴォンヌ・サンソン(ジュリアの母)、ホセ・クアーリョ(イターロ、盲人の友人)、フォスコ・ジャケッティ(大佐)、ジュゼッペ・アドバッティ(マルチェロの父)、ミリー(マルチェロの母)、クリスチャン・アレグニィ(ラウル)
編集: フランコ・アルカッリ
製作会社: マース・フィルム、Marianne Productions、Maran Film
配給: パラマウント・フィルムズ(伊)、CIC(仏)、パラマウント映画/CIC(日)
公開: 1970年10月22日(伊)、1971年2月17日(仏)、1972年9月2日(日)
上映時間: 115分
製作費: $750,000
 
【世間の評価】 ※2017.3.9時点
CinemaScape: 3.8/5.0 (185人) 
Filmarks: 4.0/5.0 (1,005人) 
Yahoo! 映画: 4.02/5.00 (82人)
IMDb: 8.1/10.0 (19,003人)
Rotten Tomatoes(Critics): 8.9/10.0 (50人)
Rotten Tomatoes(Audience): 4.3/5.0 (8,441人)
 
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