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長らく興味はあったものの、果たして理解できるのか、途中で寝てしまうのではないかと不安で、手を出しそびれていたピーター・グリーナウェイ監督作。

しかし、結果的には、観れてよかった。

その世界は倒錯しまくっているが、ぶれることがなく突き進んでいる点、一般の観客にも理解は可能な点から、眠くなることもなかった。
ブラボー!

美術、映像、カメラワーク、音楽、衣装… と、こだわりにこだわりを重ねて作られたであろう世界がそこに。一体いくら金をつぎ込んだのだろうと心配になるほど。

以下、ネタバレあり。

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食べることと、エロスの混ざり具合。非常に動物的。トイレも象徴的に何度も登場する。
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トイレの個室で下着姿になるジョルジーナ(ヘレン・ミレン)。この後、バンバン脱ぐシーンが相次ぐが、秘してナンボなので、観終ってみるとこのシーンがもっともエロかった気はする。

全編通して、ジョルジーナのセットや衣装にも力を入れている。

テーブルに並ぶ面々を捉えたこのシーンでも、ジョルジーナの髪型はとがっている。
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構図も美しい。『ファニーとアレクサンデル』を思い出す。

色へのこだわりも強く、場面が転換すると、色調や衣装も変わる。
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トイレは白。Toilet、Bathroom、loo、W.Cなどといろんな呼び方をするのは、いかにもイギリス人っぽい趣向。

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ダイニングは赤。

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厨房は緑。お腹の出た上半身裸のおっちゃんに自然と目が行ってしまう。

そして、レストランの外の、駐車場スペースのような場所は黒基調。野犬がウロウロしていたり、腐った食材を積んで異臭を放つトラックが停まっていたりする世界観。

 
役者陣の中では、泥棒役(ストーリーからだけ判断すると、ただの横暴なヤクザに見える)のアルバート(マイケル・ガンボン)がひかっていた。
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野卑極まりないこのおっちゃんがぐいぐい引っ張っていってくれる。彼の勢いなくして、この映画は成立しえない。

レストランに何冊も本を持参し、食事しながらも本を読むマイケル(アラン・ハワード)。彼に対し、「レストランで読んでいい本はメニューだけだ。これはシェフに対する冒涜だ」と宣うアルバート。滅茶苦茶だが、それがいい。

アルバートの怒りを買ったマイケルは、最終的に本を口に詰められて殺されてしまう。この手法はデヴィッド・フィンチャーの『セブン』にも影響を与えたのではなかろうか。
そして、敢えてコメントを差し控えるが、極めつけはクライマックス。

作品全体を通してみると、決して共感できる世界ではなかったが、監督の世界観、主張がびしびし伝わってきて、まさに”芸術作品”として楽しめた。映画は総合芸術だということを体現している映画だ。おさまりのいいエンディングも自分好みであった。

 
最後に、バージョン違いのチラシ・パッケージデザインを。
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こちらのほうがエロス寄りなのかな。

製作: キース・カサンダー
監督: ピーター・グリーナウェイ
脚本: ピーター・グリーナウェイ
撮影: サッシャ・ヴィエルニー
美術: ベン・ヴァン・オス / ヤン・ロールフス
音楽: マイケル・ナイマン
衣装: ジャン・ポール・ゴルチエ
出演: リシャール・ボーランジェ(Richard, cook) / マイケル・ガンボン(Albert) / ヘレン・ミレン(Georgina) / アラン・ハワード(Michael) / ティム・ロス(Mitchel) / サイアラン・ハインズ(Cory) / ゲイリー・オルセン(Spangler) / ユアン・スチュワート / ロジャー・アシュトン・グリフィス / ロン・クック / リズ・スミス(Grace, old lady) / エマー・ギルスピー(Patricia, stabbed with a folk in the cheek) / ジャネット・ハンフリー / アーニー・ブリーヴェルド / トニー・アレフ / ポール・ラッセル(Pup, singer boy) / アレックス・キングストン / イアン・シアーズ / ウィリー・ロス(assaulted by Albert in the beginning) / イアン・デューリー(Terry Fitch) / ロジャー・ロイド=パック(Geoff) / アレックス・キングストン(a waitress in red costume)
配給: ヘラルド
公開: 1989年11月1日(仏)、1990年8月4日(日)
上映時間: 124分
 
【世間の評価】 ※2016.10.19時点
CinemaScape: 3.7/5.0 (205人) 
Filmarks: 3.8/5.0 (721人) 
Yahoo! 映画: 4.01/5.00 (92人)
IMDb: 7.6/10.0 (27,312人)
Rotten Tomatoes(Critics): 7.4/10.0 (39人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.9/5.0 (21,267人)
 
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