リリーのすべて

2016年前半の洋画シーンを引っ張った作品の一つ。このタイミングでもうAmazon Prime Videoで観れるのはありがたいかぎりである。

 
今回もまた、作品の内容はまったく知らずに観始めたため、アイナーがドレスを手にしてうっとりした表情を浮かべるところまでは、そういう話だとは確信がもてずにいた。

特筆すべきは、主演二人の演技の素晴らしさ。
そして、衣装、メイク、調度品、映像へのこだわりの強さ。美しさ。

ただ、事実をもとにした話という縛りゆえか、落としどころの納得感というか盛り上がりが足りず不満が残った。

以下、印象に残ったシーンを振り返る。

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アイナ&リリーを演じるエディ・レッドメインの見事さ。本来の彼はどうなんだろうと疑ってしまうほど。
妻であるゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)のことは愛しているが、内なる自分を押さえられない。その葛藤も表れている。

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すべてを観終って、あらためてアイナーの顔をまじまじと見てみると、もう女性にしか見えなくなってくる。

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代表的なシーン。アイナーの表情に惹きつけられる。

バレエスタジオの衣装スペースで、ひとり裸で鏡に向かい合い、性器を股の間にはさみ、ドレスを体に当ててうっとりしているさまも印象に残る。シチュエーションは違えど先日観た園子温監督作『恋の罪』の彼女を思い出した。共通する陶酔具合がある。

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確か、このシーンはハンス(マティアス・スーナールツ)の前にリリーとして初めて姿を見せるところではなかったか。衣装、メイク、表情、ピンとしている姿勢、読書をしていて、犬もソファにいるというシチュエーション。絶妙なバランスで美しい。

夫婦で絵描きという設定には心躍るものがあった。前半は絵がキーとなっていたが、後半はリリーが描けなくなり絵の作品における存在感が落ちたのが残念。もっと描くシーンが多い方が個人的には嬉しかった。

 
ゲルダも魅力的な役柄だった。特に前半。後半に入ると、リリーに振り回されて、少しずつ表情から美しさが消えていく。
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ガウンような上着にハード目な革靴を履き、真剣な表情で筆を動かすゲルダは、非常に魅力的に映った。

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絵筆のように長いキセルで煙草を吸うゲルダ。似合っている。

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登場シーンは少ないがしっかりと印象を刻み込んでくれたウラ(アンバー・ハード)。
アイナーの頬にがっつりと口紅をつけるキャラクター。

 
シーン一つ一つが非常に美しく作り上げられ、撮られている。
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調度品、衣装、構図。こうやって静止画できりとってみると、こだわりがより浮かび上がってくる。

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リリーの衣装、表情もいいが、背景となる建物の奥行きある様がこれまた絵になる。

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鏡越しに鏡で自分を見るアイナーの表情。絵を描くゲルダ。この構図も美しい。

 
自分のまわりにもトランスジェンダーの親しい人がいるため、より人ごとではなく観れた。性転換手術の現在の状況についても普通の人よりは知っているため、その点については驚きはなかったが。

1925年のデンマークはこんな感じなのか。パリとの違いはあまりわからなかったが、少なくともかなりの先進国具合だというのは伝わってきた。
昭和元年の日本とは大きな隔たり。

上でも書いたとおり、幕の引き方が比較的ノーマルなところにはやや不満を感じた。リリーとゲルダの関係性の変化を含めた、それまでのストーリー運びが悪くなかっただけに少し拍子抜け。

冒頭とラストに出てくるアイナとハンスの故郷の自然の美しさには、派手さはないが、心を打つものがあった。

 
最後に、別バージョンのチラシデザインを紹介。
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海外ではこちらのデザインのほうがメインで使われている印象。
色合いの違いにつ加えて、ゲルダの視点が完全にカメラに向いているため雰囲気がかなり変わる。
また、リリーの肌質がかなり隠れて見えるため、こちらのほうがより性別が分りにくい。

原題: The Danish Girl
製作総指揮: リンダ・リースマン / ウルフ・イスラエル / キャシー・モーガン / ライザ・チェイシン
製作: ゲイル・マトルー / アン・ハリソン / ティム・ビーヴァン / エリック・フェルナー / トム・フーパー
監督: トム・フーパー
脚本: ルシンダ・コクソン
原作: デヴィッド・エバーショフ『世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語』
撮影: ダニー・コーエン
美術: イヴ・スチュワート
音楽: アレクサンドル・デプラ
衣装: パコ・デルガド
出演: エディ・レッドメイン(アイナー・ヴェイナー / リリー・エルベ)、アリシア・ヴィキャンデル(ゲルダ・ヴェイナー)、マティアス・スーナールツ(ハンス・アクスギル)、ベン・ウィショウ(ヘンリク・サンダール、リリーに惹かれる)、アンバー・ハード(ウラ、二人の友人、バレエ)、ゼバスティアン・コッホ(ヴァルネクロス、執刀医)、エメラルド・フェネル(エルサ、ゲルダの友人)、エイドリアン・シラー(ラスムッセン、画商)、レベッカ・ルート(看護婦)、ソフィー・ケネディー・クラーク、Peter Krag(バレエスタジオのドアマン)
製作会社: ワーキング・タイトル・フィルムズ、プリティー・ピクチャーズ、アルテミス・プロダクションズ、リヴィジョン・ピクチャーズ、セネター・グローバル・プロダクションズ
配給: フォーカス・フィーチャーズ(米)、ユニバーサル・ピクチャーズ、東宝東和(日)
公開: 2015年9月5日(ヴェネツィア国際映画祭)、2015年11月27日(米)、2016年3月18日(日)
上映時間: 119分
製作費: $15,000,000
興行収入: $64,200,000
 
【世間の評価】 ※2017.1.23時点
CinemaScape: 3.1/5.0 (11人) 
Filmarks: 4.0/5.0 (20,736人) 
Yahoo! 映画: 3.83/5.00 (1,612人)
IMDb: 7.0/10.0 (101,316人)
Rotten Tomatoes(Critics): 6.6/10.0 (209人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.7/5.0 (26,571人)
 
@Amazon Prime Video