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「キートン将軍」ないしは「キートンの大列車強盗」の題でも知られるバスター・キートンの代表作。

キートンの作品を観るのはこれが初めて。
サイレント映画を観るのも久しぶりだ。

1926年制作の本作品だが、1926年といえば昭和2年。戦前もいいところ。
自分にとっては今まで観た映画の中でいちばん古い作品かもしれない。

舞台はアメリカ南北戦争時代の、南部。

キートンは中世ヨーロッパにいそうな貴族っぽい顔立ちで、見慣れるまでは違和感があったが、じきに慣れた。

「キートンの大列車追跡」のあらすじ

機関車ジェネラル号を恋人同様に愛する、南部の機関士ジョニー・グレイ。アメリカが南北戦争に突入し、南部に侵入した北軍のスパイが愛機ジェネラル号と一緒に恋人のアナベルも奪って逃げ去ってしまった。機関車と恋人を奪回せんと、一人機関車を器用に操って大追跡を開始するジョニー。やがて彼は北軍本部に潜入し、どうにかアナベルを取り戻すが……

この作品は非常に高く評価されているが、その理由はよくわかる。

コメディとしても、サスペンスとしても、人情の機微の表現の点からも、非常にうまく作られている。この作品が後の多くの作品に強い影響を与えたことは想像にかたくない。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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本作を輝かせている要素は、大きく2つあると自分は思う。

1つは、キートンの役者としての魅力。
もう1つが、機関車をうまく使い、キートンが機関士であることを最大限に活用した脚本の秀逸さだろう。

キートンは本当によく動くし、ところどころ早回しをしているのだと思うが、その素早さに目を見張らされる。
また、動きでコミカルさを表現する能力も高いうえ、表情で哀しみも伝えてくる。
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脚本が素晴らしいだけでなく、小道具も魅力的。例えば、ひとりで漕ぐスタイルのこの車両で機関車を追うというスタイルも悪くない。哀愁も感じさせる。
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疾走感がそれなりにある汽車の上でも、奮闘するキートン。
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有名なショット。機関車の先頭の、障害物除けの(?)スカートのような部分に陣取り、線路上に落ちている障害物をどかしながら汽車を進める。
ここが非常にうまく作られている。

機関車での追跡シーン以外でも、後世に影響を与えていると思われるシーンは数多い。

前半、打ちひしがれて汽車の車輪と車輪をつなぐ棒にキートンが腰かけていたら、そのまま機関車が動き出す印象的なシーンがある。
その車輪間をつなぐ棒に、ラストでは恋人のアナベルと一緒に座ることになる。
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腰かけて、アナベルにキスをしようとすると、南軍の兵士たちが通りかかりいちいち敬礼をせねばならずなかなかキスができない。そこで、アナベルと座る位置を代わりキスをしながら適当に手をあげて敬礼を返す。このシーンは爽やかかつアメリカっぽくて好きだ。1925年のこの時代でも、比較的堂々と恋人とキスできる時代だったことがわかる。

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テーブルで会議をしている敵方の、足元に隠れているというお決まりの構図も、この作品が生み出したものではなかろうか。絵になるショットだ。

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また、北軍の機関車が橋もろとも川に落ちるこのシーンは、当時きっと話題になったことだろう。今見ても爽快だ。

ラストのハッピーエンドも、予想はつくが、みんな満足するのではなかろうか。

面白く感じたのは、ずっと音楽が流れていること。それも、おそらく映像を編集した後に、最後にオリジナルの音楽をつけているのだろう。人の動きに音楽が合っているのだ。

安定した作り。楽しめる作品。
しかし、さすがに時代が経ち過ぎていて、「これはめっちゃ面白い!何度も観たい!」とまではいたらない。

 
最後にバージョン違いのチラシ・DVDデザインを紹介。
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かなり古そうなイラストデザイン。

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日本の、いかにも古典作品っぽいパッケージデザイン。キートンよりもヒロインとその父をフィーチャーしている。

(おまけ)気になった英語表現

サイレント映画のため、表現と呼べるようなものはほぼ出てこないが、キートンが機関車のことを”engine”と称していて、調べてみると確かにengineにはそういう意味もあることがわかった。

製作: ジョセフ・M・シェンク
監督: バスター・キートン、クライド・ブラックマン
脚本: アル・ボースバーグ、チャーリー・スミス
撮影: デブロー・ジェニングス、バート・ヘインズ
音楽: コンラート・エルファース
出演: バスター・キートン(ジョニー・グレイ)、マリオン・マック(アナベル・リー)、グレン・キャヴェンダー(北軍アンダーソン大尉)、Jim Farley(サッチャー将軍)、Frederick Vroom(南軍将軍)、チャールズ・ヘンリー(アナベルの父)、フランク・バーンズ(アナベルの兄)
編集: バスター・キートン、Sherman Kell
制作会社: Buster Keaton Productions、Joseph M. Schenck Productions
配給: United Artists
公開日: 1926年12月31日(日、東京)、1927年2月5日(米、ニューヨーク)
上映時間: 75分(バージョンにより異なる)
予算: $750,000
興行収入: $1,000,000
 
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