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20年ほど前に観ており、自分好みのテイストだったことは覚えているが、詳細は忘れてしまっていたので、もう一度あの空気感を味わおうと、あらためてDVDを借りてみた。

 
パトリス・ルコント監督は女性の撮り方の上手さがピカイチだという印象だったが、本作のヒロインであるマチルド(アンナ・ガリエナ)はもとの素材が良質なうえ、撮り方もうまく、期待を裏切らない美しさだった。チラリズムを多用しつつも、ヌードを使わずに、あの艶かしさを出せるのはルコントならではだ。

しかしそれ以上に、ジャン・ロシュフォール演じる主人公アントワーヌの眼差しや、表情に惹きつけられた。
20年前とは自分も見方が変わったのだろう。

「髪結いの亭主」のあらすじ

ドーヴィルの海岸沿いの家に住む12歳の少年アントワーヌは床屋に行くのが大好きだった。ふっくらとした美人な理髪師、シェーファー夫人の、髪に触れる手触りや彼女の体臭にうっとりする時間は彼にとって至福のときだった。ある日、白衣の合間から垣間見えた彼女の乳房に性への目覚めを感じ、将来は髪結いの亭主になる夢を抱く。そして年を重ね中年になったアントワーヌは、ある日美しい理髪師マチルドと出会い、求婚する。夢が叶ったアントワーヌは彼女以外何も要らず、彼女もまた永遠に彼に愛され続けたいと願う。ふたりの幸福の時はいつまでも続くかのように時は流れ……

20年にはさほど感じなかっただろう点として、本作の内容が非常にファンタジーだということ。

そのさいたるものは、アントワーヌとマチルドの関係性。

初対面で求婚するほうもするほうだが、それを受けるほうも受けるほう。
さらに、結婚後も、人目をはばからずに床屋の店内で、二人だけの世界に没入する彼ら。決してスリルを楽しんでいるわけでもなさそう。

そこに、今の自分は共感できないものを感じてしまった。

もちろん、それを差し引いても、好きな映画であることに違いはないのだが。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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何曲か使われるアラブっぽい音楽。
これが、シャンソンとか、ヨーロッパっぽいものではなく、自分好みの民族系のものだというのが良かった。
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アラブ音楽をバックにした、オープニングのアントワーヌ少年(ヘンリー・ホッキング)による、海辺でのダンスシーンは好きなシーンの一つだ。

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シェーファー夫人の香りに恍惚となりながら、頭を洗ってもらうアントワーヌ少年。
彼女の香り(つまり体臭)が強いという設定が、フランスっぽい。日本ではこういう設定は少なそう。
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ボタンが外れ、白衣の合間から垣間見えたシェーファー夫人の乳房。これまたファンタジー。

あらためて考えると、作品全体が12歳の少年が夢見る世界を映画化したものといえなくもない。
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かがんだアンナの胸元から乳房が見える、いかにも少年っぽい妄想ワールド。
そこを手を抜かずに作り上げている、パトリス・ルコント。だからこそ世界(?)で受けたのだろう。
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もはやマンガの世界に近い。ドキドキ感よりも、「おい、おまえら!」と突っ込みたくなるシーン。
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本作で重要な役割を果たす、アントワーヌの眼差し。
ジャン・ロシュフォール、良い役者だ。

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理容室の色使いがオシャレなのもフランスっぽい。フロアーも凝っているし、イスを含めて配色も美しい。

 
突然の幕切れ。
このストーリーは、なんとなく覚えていたから今回は驚かなかったが、初見で筋を知らなかったらたまげるストーリーではある。

ラスト。客の髪を洗い、アントワーヌが好きなアラブっぽい音楽をかけ踊りだす。
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客も一緒にひとしきり踊ったあとで、唐突に曲をとめ、クロスワードに戻る。そして、「妻がもうすぐ戻ります」と客に告げる。
その表情に悲しみはない。だからこそせつない。

 
最後に、バージョン違いのチラシ・DVDパッケージデザインを紹介。
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日本語版。公開20周年を記念したデジタル・リマスター版。

原題: Le mari de la coiffeuse
英題: The Hairdresser’s Husband
製作: ティエリー・ド・ガネイ
監督: パトリス・ルコント
脚本: パトリス・ルコント
撮影: エドゥアルド・セラ
音楽: マイケル・ナイマン
出演: ジャン・ロシュフォール(アントワーヌ)、アンナ・ガリエナ(マチルド)、モーリス・シュビ(イシドール)、ロラン・ベルタン(アントワーヌの父)、フィリップ・クレヴノ(モルヴォワシュー、常連客)、ジャック・マトゥ(シャルドン、妻が家を出てしまう男)、アンヌ=マリー・ピザニ(シェーファー夫人、12歳のアントワーヌの憧れ)、ヘンリー・ホッキング(アントワーヌ12歳)、ティッキー・オルガド(モルヴォワシューと一緒に来店する男)、ミシェル・ラロック(養子をとったことを後悔している母親)、トマ・ロシュフォール(散髪を嫌がる男の子)、ローレンス・ラゴン(店で旦那を平手打ち)、Youssef Hamid(最後に登場しアントワーヌと一緒に踊るチュニジア人)
編集: ジョエル・アシュ
配給: AMLF(仏)、FTD International Cinéma(グローバル)、アルシネテラン=テレビ東京(日)
公開: 1990年10月3日(仏)、1991年12月21日(日)
上映時間: 82 分
 
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