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世間の評価はいまひとつな印象だったが、ビッグネームではあるし、渡辺謙のサムライ姿には興味があったので、とりあえず一度は観ておくかとチョイス。

まず、予想以上の戦闘シーンの多さに驚いた。

監督は、武士道や、都会から離れた小さな村に暮らす侍たちの姿を映したかったのだろう。

侍たちの世界は、美化されている面はもちろんあったが、今の日本人が見ても共感したり、感じ入るところがあるレベルでしっかり作られてはいた。
要は変な誤解で固められた、よくある外国人が作るサムライストーリーにはなっていない。

渡辺謙の格式高い佇まいは期待を裏切らない出来。日々慎ましく、己の道に精進する侍たちの姿や、村の自然の美しさにも心動かされた。

「ラストサムライ」のあらすじ

明治維新後間もない、1870年代の日本。南北戦争で英雄になるも、先住民族を虐殺した過去に苦しむ米軍大尉のオールグレンは、西洋の戦術を取り入れたい明治維新政府に軍事顧問として招かれる。そして彼は、政府に反旗をひるがえした勝元盛次ら、前時代的な侍たちを討伐するよう命じられるが、近代装備を有するものの訓練が不充分な軍隊は勝元の軍勢に大敗。ただ一人最後まで闘い続けたオールグレンは侍たちに捕えられ、山深い彼らの村へと連れて行かれる。そこで季節を過ごすうち、侍の生き様に触れた彼は少しずつ変わっていき…。

難しいのは、その世界に、トム・クルーズ演じるオールグレン大尉をどう絡めるかというところ。

渡辺謙主演の映画ではなく、本作はあくまでもトム・クルーズ主演の映画。どうしても彼を立てねばならない。そこに多少の無理は生じるし、だからこそ日本での評価はそこまで高くならないのだろう。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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勝元の一味が初めてオールグレンの前に現れるシーン。美化し過ぎなショットではあるが、こういうのを撮りたくなる気持ちは理解できる。

雨が印象的に使われる。もっとも印象てきなのはオールグレンが氏尾(真田広之)に稽古をつけられるシーン。
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コテンパンにやられながらも何度も立ち上がろうとするオールグレン。このオールグレンの闘う心の強さは、わかりやすく主役ならではのキャラクター付けだ。

真田広之の殺陣の切れ味が尋常ではないなと思っていたら、彼はJAC出身で殺陣の上手さには定評があったとのこと。これには納得。

村の静かな美しさを演出するためにも雨がうまく使われていた。
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このショットは雨のシーンではないが、村の美しい景色には目を見張るものがあった。てっきり日本のどこかなのかと思いきや、ロケ地はニュージーランドとのこと。

勝元が寺でお経を唱え、心を整える姿が何度か見られる。
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背景の自然豊かな村の様子とあいまって、独特な雰囲気を醸し出す。宗教が生活に根差すキリスト教世界の人々にとっては、こういう絵は理解しやすいのかもしれない。

村の家屋内も美しく撮られている。
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屋敷の中で。三人の座る位置、向き、灯りの具合が細かく配慮されていることがわかる。

勝元の弟の妻である”たか”を演じる小雪の艶かしさにはノックアウトされた。
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艶めかしい表情の小雪。見事なキャスティング。

たかの長男飛源を演じる池松壮亮はかなり登場シーンが多い。面影がはっきりとあり、芯の強さと可愛らしさが共存する。
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池松壮亮、良い顔をしている。
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野球を教えようとするオールグレン。飛源の子どもらしい無邪気な表情にホッとさせられる。

予算がふんだんにあったためだろうか。その他の脇役にもキラリと光る役者が多かった。

その一人が、実業家にして大臣の大村松江(原田眞人)。
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オールグレンが忌み嫌うベンジャミン・バグリー大佐(トニー・ゴールドウィン)、大村松江(原田眞人)、政府軍指揮官(二階堂智)。原田眞人は嫌らしい役をうまく演じていた。二階堂智は顔立ちが印象に残る。
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明治天皇を演じる中村七之助にも気品が漂っていた。
寡黙なサムライボブ(福本清三)もいい味を出していた。

 
オールグレンと勝元の、会話の内容や、友情のようなものが生まれる関係性は一つの見所だろう。ストーリーを潤滑に進めるためには致し方ないことなのかもいれないが、勝元の英語の流暢さには、さすがに違和感があった。
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襲撃してきた忍者に立ち向かう二人。
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氏尾、勝元、オールグレン揃い踏み。お金がかかっていそうなショットだ。

落とし所をどうつけるのかが難しいストーリー。
さすがに勝元が政府との闘いに勝つわけはない。
そこで決死の覚悟で臨んだ闘いで重傷を負い、オールグレンの助けを借りながら自害することで幕を引く。

その後、政府軍の官憲たちが土下座して勝元に敬意を表するのはさすがに過剰な気がした。

嫌いなテイストの話ではないが、忍者に村が襲撃されるシーンしかり、オールグレンと勝元が並び立つ構成には無理を感じざるをえない。
侍の世界で、渡辺謙の存在感にトムは勝てない。

 
最後に、バージョン違いのチラシ・DVDパッケージデザインを紹介。
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英語版。やたらの武士道押しに苦笑。

製作総指揮: テッド・フィールド、チャールズ・マルベヒル、リチャード・ソロモン、ビンセント・ウォード
製作: トム・クルーズ、トム・エンゲルマン、スコット・クルーフ、ポーラ・ワグナー、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコビッツ
監督: エドワード・ズウィック
脚本: ジョン・ローガン、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコビッツ
原案: ジョン・ローガン
撮影: ジョン・トール
美術: リリー・キルヴァート
音楽: ハンス・ジマー
衣装: ナイラ・ディクソン
特撮: ジョン・D・ミリナク、ロバート・G・ウィラード、ディック・ウッド、レイ・マッキンタイアJr.、ジェフリー・A・オークン
出演: トム・クルーズ(ネイサン・オールグレン大尉)、渡辺謙(勝元盛次)、ティモシー・スポール(サイモン・グレアム、通訳、写真も撮影)、トニー・ゴールドウィン(ベンジャミン・バグリー大佐、オールグレンが忌み嫌う)、ビリー・コノリー(ゼブロン・ガント軍曹、侍との闘いで命を落とす)、真田広之(氏尾)、小雪(たか、勝元の弟の妻)、中村七之助(明治天皇)、原田眞人(大村松江)、菅田俊(中尾、ガタイの良い侍)、池松壮亮(飛源)、福本清三(寡黙なサムライボブ)、小山田シン(小山田真とも、勝元の息子、信忠)、スコット・ウィルソン(スワンベック大使、大村に失礼な態度をとられる)、チャド・リンドバーグ(ウィンチェスター宣伝員、補佐)、湊葵(孫次郎)、伊川東吾(長谷川大将、切腹し勝元が介錯)、ウィリアム・アザートン(ウィンチェスター宣伝員)、二階堂智(政府軍指揮官)、高良隆志(侍の一人)、ジョン・コヤマ(大村のボディガード)
編集: スティーヴン・ローゼンブラム、ヴィクトール・ドュ・ヴォイス
製作会社: クルーズ/ワグナー・プロダクションズ
配給: ワーナー・ブラザース
公開: 2003年12月5日(米)、2004年8月14日(日)
上映時間: 154分
製作費: $140,000,000
興行収入: $456,758,981(内、日本で137億円)
 
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