theunbearablelightnessofbeing

久しぶりに見返した。

男一人と女二人の不思議な関係性で成り立ち、印象が強いわけではないが、独特の面白さがあることは覚えていた。
が、ストーリーは、ほぼ全て忘れていた。

自分の記憶力のなさに笑ってしまう。おそらく、ほかのタイトルだったら、初めて観た映画として最後まで気づかずに楽しんでいただろう。

 
それにしても、不思議な映画である。

わかりやすいアンハッピーエンドでもなく。
かといって、ハッピーエンドでもなく。

それでも、静かに、暖かい気持ちで映画を観終えることができる。

以下、ネタバレあり。
 

象徴的なシーンとして、トマシュ(ダニエル・デイ・ルイス)と黒い下着姿のサビーナ(レナ・オリン)を、床に置いた鏡越しに映すシーンが、チラシやパッケージ写真にも使われるが、それ以外にも、芸術家であるサビーナの部屋の内装や、鏡やガラスに映る姿を印象的に使うなど、映像へのこだわりが強く感じられる。

また、唐突にトマシュとテレサ(ジュリエット・ビノシュ)のカップルが死んでしまうラストを含め、派手ではないが脚本の特異性はある。

mirror
有名な、鏡越しにトマシュとサビーナを捉えた構図。

文学的なタイトルも良い。
原作はミラン・クンデラが1984年に発表した小説。
テレサがジュネーブからプラハに帰るシーンで使われるセリフがタイトルに関連している。
“Life is very heavy to me, but it is so light to you. I can’t bear this lightness, this freedom.”

キャスティングも絶妙。
特に、トマシュを演じるダニエル・デイ・ルイスが、決してしつこくはないものの、作品の中心にどっしりと根を下ろして独特の存在感を示し、その醸し出す雰囲気が作品全体に強く影響している。

トマシュは名うての脳外科医。プレイボーイ。
ダニエル・デイ・ルイスは、顔は決して悪くないんだが、広いオデコが非常に特徴的。
中心となる二人の女性テレサ&サビーナを含め、女の扱いを心得ており、モテる男の典型の動きをする。
ファーストコンタクトで躊躇せず早く動いてアプローチし、自信のありそうな話し方でやや威圧し、だが決して話し過ぎず、確実に落とす。その後は、会ってる時は情熱的だが、大きくは踏み込まない。相手を束縛しようともしない。

トマシュは、出張に出かけた田舎のスパの街のバーで、ジュリエット・ビノシュ演じるテレサと出会う。

完全に自分の好みの問題だが、ジュリエット・ビノシュはこの映画でも、彼女らしい魅力を振りまいている。
体型のせいか水着も似合わないが、それすら可愛く思わせる魅力が滲み出ている。

プラハに仕事を探しに出てきて、ダニエルデイルイスの部屋を訪ねる。
移動のバスで風邪を引いたようだというと、「診察してあげよう、服を脱いで」とトマシュ。
(なお、この映画では、トマシュは少なくとも4人の女性に対して”Take off your cloths”というセリフを発する。)
そこで、ビノシュの上着を脱がせる時に脇が露わになるのだが、1960年代の東欧、チェコが舞台だけあって、脇毛が存在感豊かに生えている。これが非常にエロティック。
その後の濡れ場も、本作の中で一番グッと来る濡れ場だった。

自分の中では、ビノシュはさほど脱いでいる女優のイメージはなかったが、この映画では結構裸になるシーンが多い。

トマシュとの最初の出会いから、屋外のベンチで話すシーンの彼女が素敵。
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レナ・オリン演じるサビーナは、帽子を被り、鏡の上に黒い下着姿で這いつくばったり、テレサとお互いヌードを撮りあったりと、三人の関係性をドラマチックにする上でも、本作の中で重要な役割を果たしている。
が、主演二人のアクセント的な立ち位置にとどまる。

恋人のフランツ(デレク・デ・リント)が、妻を捨てて自分の家に転がり込んでくると、その場では喜ぶが、彼が一旦自宅に帰るとすぐに家を引き払う。この脚本はベタっちゃベタだが、すっきりする。

作品全体を通して、プラハの春の前の、共産主義下の重苦しい雰囲気が覆っている。もちろん西側から見た視点で作られた映像ゆえ、バイアスはかかっているだろうが。
ただ、当時の東欧仕様なのかソ連仕様なのかの、無骨さとキュートさが合わさったトマシュの水色の車や、最後事故にあってしまうトラックは魅力的だった。

主役二人の出会いのシーン。トマシュの部屋番号が6で、テレサの勤務が6時に終わる。そして、二人が最後に泊まる宿の部屋の番号も6。気づいていないだけで、外にもこんな暗示が散りばめられていたのかもしれない。

3時間弱の長尺。独特の世界観をたっぷりゆっくりと楽しめる映画である。

 
<<追記>>
公開当時はボカシが入りまくりだったのか。その点では、その当時に観なくてよかった。

製作総指揮:バーティル・オールソン
製作:ソウル・ゼインツ
監督:フィリップ・カウフマン
脚本:ジャン・クロード・カリエール
原作:ミラン・クンデラ
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
音楽:レオシュ・ヤナーチェク
出演:ダニエル・デイ・ルイス、ジュリエット・ビノシュ、レナ・オリン、デレク・デ・リント、ステラン・スカルスガルド、ダニエル・オルブリフスキー、ドナルド・モファット
公開:1988年2月5日(米)、1988年10月29日(日)
上映時間:171分
 
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