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20年ほど前に『アンダーグラウンド』で出会い、驚き、『黒猫・白猫』でその魅力の虜になった、エミール・クストリッツァ監督。

去年DVDで観た同監督の『ライフ・イズ・ミラクル』が悪くない出来だったこともあり、彼の80年代の作品で、カンヌで監督賞も受賞している本作を手にとった。

『アンダーグラウンド』も『ライフ・イズ・ミラクル』もジプシーがかかわる話だったが、その源流は本作にあるのだろう。

音楽、博打、貧しさ、家族愛、すべてが詰まっている。
貧しさゆえに犯罪に走りがちな子どもや若者たち。これは世界共通の話。『シティ・オブ・ゴッド』『スラムドッグ・ミリオネア』等を思い出す。
本作を見れば、ヨーロッパの観光地で、ジプシーの子どもたちが観光客を襲うのも、さもありなんと思わされる。

「ジプシーのとき」のあらすじ

ジプシーたちが暮らす、旧ユーゴスラビアのとある村。不思議な魔法とジプシーの誇りを祖母から授かり受けた心優しい少年ベルハンは、粗末な家で祖母と足の悪い妹と放蕩者の叔父と暮らす。美しい娘アズラに恋をするも、貧しい彼との結婚に彼女の母は猛反対。ある日、村一番の金持ちで、悪事をして稼ぐ首領アーメドの一味が村に帰ってきた。祖母の魔術がアーメドの息子を急病から救ったことで、アーメドはベルハンの妹の足を治すことを約束。ベルハンも付き添って町の病院に向かったが、妹を入院させると、アーメドは無理やりベルハンをイタリアへ連れていき、ジプシーの“生活の糧”のひとつである盗み、物乞いを教え込む。次第に悪に手を染めるぺルハンだったが…

前半は、良くも悪くも想定されるストーリーで、楽な気持ちで観ていられた。
しかし、後半、どうにも腑に落ちない演出、ストーリー展開があり一気に醒めてしまった。

それ以外の点は楽しめる内容だっただけに、残念。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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音楽はジプシーの生活と切り離せない存在。クストリッツァの監督作品では、音楽も楽しみの一つだ。
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ベルハン(ダボール・ドゥイモビッチ)がアコーディオンを弾き、家族が楽しそうにしている絵は、まさに幸せの構図。こういったシーンをもっと盛り込んで欲しかった。

ベルハンのおばあちゃんがいい味を出している。
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孫・ベルハンとアズラの結婚を認めてもらおうと、アズラの母親と交渉するも、こんなはした金じゃダメだとすげなく拒否される。

馬鹿きわまりない叔父が博打で負け、金を出せと親(=ベルハンの祖母)に迫るが出さないのを見て、車で家の屋根をひっぱりあげるシーンは、見ごたえあった。
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何よりも、大雨が降っているなか、こんな状態になっても、特に慌てるそぶりもない、祖母・ベルハン・妹の3人の姿が強く印象に残った。
家へのこだわりが、定住文化の人間とは違うという意味合いもあるのかもしれない。

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首領のアーメドは強面あり、病気で気弱な面あり、それでも若い再婚相手を手にしたりと、役柄の設定も面白いし、演じるボラ・トドロビッチの雰囲気にも合っており、エッジが効いた存在だった。

後半になり、ベルハンがアーメドに使われるようになってから暗雲が立ち込める。
ここまではまだよかった。ベルハンがアーメドに騙されていることは予想がつく。

しかし、身体を悪くしたアーメドが、次のリーダーとしてベルハンを指名したところから一気におかしくなる。
どう見ても、ベルハンはまだ子どもだ。実績をあげているようにも見えない。
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かっこつけてスーツを着ても、まったく貫禄がない。すごみもない。真剣味もない。

そこからは観ていられなかった。
アーメドへの復讐をちかって、アーメドが再婚するときのパーティ会場に乗り込むも、計画性もなく、荒々しさもなく、なんともいえない。
それこそがリアル? 拳銃を持って追いかけてきて、ベルハンを撃ち殺す花嫁にリアルさは感じられなかった。

と、後半のストーリー展開から、違和感をぬぐえないままジ・エンドとなってしまった。

アズラのお腹にいる子どもは自分の子どもじゃないと大もめする二人。
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しかし、なんだかんだ言って、結局結婚してしまうのだな。ここも腑に落ちないポイントの一つだった。

 
最後にバージョン違いのチラシ・DVDパッケージデザインを紹介。
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このデザインのほうが、上のものより主流のよう。
だが、自分はこのシーンがあまり印象に残っていない。

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日本語版。登場人物やいろんなシーンをちょっとずつ詰め込んだ欲張りなデザイン。決め手に欠けたのだろうか。わかる気はする。

原題: Dom Za Vesanje
英題: TIME OF THE GYPSIES
製作総指揮: ミラン・ヌルティノビィチ
製作: ミルザ・パシッチ
監督: エミール・クストリッツァ
脚本: エミール・クストリッツァ、ゴルダン・ミヒッチ
撮影: ヴィルコ・フィラチ
音楽: ゴラン・ブレゴヴィッチ
出演: ダボール・ドゥイモビッチ(ベルハン)、ボラ・トドロビッチ(アーメド、首領)、リュビッツァ・アジョビッチ(祖母)、Husnija Hasimovic(メルジャン、叔父)、Sinolicka Trpkova(アズラ、ガールフレンド)、エルバイラ・サリ(ダニラ、妹)、Zabit Memedov(ザビット、近所のおっちゃん、何かと世話をやいてくれる、結婚式の司会も)、Mirsad Zulic(アーメドの弟)、Sedrije Halim(アズラの母)、Ajnur Redzepi(ベルハンの息子)
編集: アンドリア・ザフラノヴィッチ
配給: ヘラルド・エース、日本ヘラルド映画
公開: 1988年12月21日(ユーゴスラビア)、1991年4月27日(日)
上映時間: 126分(DVDは142分)
製作国: イギリス、イタリア、ユーゴスラビア
言語: ロマ語、セルビア・クロアチア語、イタリア語
 
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