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1930年代、アラバマの田舎町が舞台。

当時のアメリカ南部とくれば、揺るがない黒人への偏見と差別がはびこっている。

妻は早逝(?)し、父と息子、娘の三人で暮らす家族が主人公ファミリー。

グレゴリー・ペックが演じる父は、弁護士だが、ややくたびれている。父のことを、子どもたちはファーストネームで「アティカス」と呼ぶ。独特の距離感の家族だ。

「アラバマ物語」のあらすじ

1930年代、不況のドン底下のアメリカ。アラバマ州の田舎町メイカムに、男やもめのアティカスは二人の子どもと、家政婦とともに暮らしていた。アティカスは公平で穏やかで親身で、その知性と人柄で周囲から篤く信頼されている町の弁護士である。そんなある日、アティカスに対して地元の判事が白人女性メイエラ・ユーエルに対する婦女暴行事件で、黒人容疑者のトム・ロビンソンの弁護の依頼をする。町の人々は黒人を弁護したらただではすまぬと、アティカスに警告するが、アティカスは不正と偏見を嫌い、何よりも正義を重んじる男だった。人種差別の激しいアメリカ南部で黒人の弁護をするフィンチ一家は、周囲の心無い人々から中傷を受ける羽目になってしまう。

グレゴリー・ペックが主役だが、物語の語りべが大人になった娘スカウトであるなど、子どもたち、特にスカウトの存在感が強い作品といえる。

そして、わたしにはスカウトのキャラクターが、生理的に合わなかった。
そもそも得意ではない小学校低学年女子特有の声のトーンに加え、すぐに大きな声を出す挙動も好みではなく。

ストーリーの面では、全体を通じて、黒人への根深い差別が大きなテーマとなっている。
しかし、自分の頭ではわかっていても、芯の部分では自分にはなじんでいないことを痛感させられるストーリーだった。
“差別”を自分たちの生活の一部として内包してきたアメリカ人でないと、しっかりと理解はできない話なのかもしれない。

それ以外のプロットに驚くべきものがあるわけでもない作品だから、なおさらそう感じた。

ノスタルジックで、教科書的で、時に詩的な内容。
サンセット大通り』、『スミス都へ行く』、『ロリータ』、そして本作と、ここ最近観たモノクロの洋画はどれもピンと来ていない。

なお、邦題の「アラバマ物語」は、少なくとも現在においては、作品を魅力的に伝えるタイトルにはなっておらず、マイナスに働いているとしか思えない。

以下、ネタバレも含みつつ、印象に残ったシーンを振り返る。

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法廷シーンはグレゴリー・ペックの活躍どころではあったが、彼が強い印象を与えてくれたとまでは言い難い。
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陪審員に、偏見で裁かないように力説するアティカス。

被告人トム・ロビンソン(ブロック・ピーターズ)の、気品のある立ち振る舞いが印象的。
まったくの無実であることがわかりやすく伝わってくる。それでいて浮ついていない人間性も同時にわかる。
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力強い顔立ちのトム・ロビンソン。ジャンルは異なるが、1990年代、横浜ベイスターズに在籍していたプロ野球選手のグレン・ブラッグスを思い出した。

 
被害者の父(ジェームズ・アンダーソン)の傍若無人っぷり、そしてそれが許されてしまう環境には到底納得がいかなかった。
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被害者のメイエラ(コリン・ウィルコックス)と、その父(ジェームズ・アンダーソン)。
メイエラの置かれている境遇を考えると彼女に同情の余地はある。
しかし、やりたい放題で善意が全く感じられないこのおっさんをのさばらせることに、陪審員が納得していることが自分には我慢ならない。

そもそも黒人と白人では人間としてのランクが異なるという当時の認識からすれば不思議な判決ではないのかもしれない。
が、それを勘案してもなお、わたしにはこの結末は許せない。
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1階の席には白人が座り、黒人は2階、とはっきり席も分れている。その中で、ジェムとスカウトの二人は2階で傍聴している。

 
自分の琴線にはあまり触れなかったが、重要な役割を担っている、ジェムとスカウト。
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学校の学芸会的なパーティ用にハムの衣装を着ているスカウト。ハムはその地の名物の農産物とのことだが、この仮装には意表を突かれた。
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個人的にはスカウトのジェムの兄妹よりも、このディル(ジョン・メグナ)のほうが印象に残る。
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象徴的な人物なのに、登場シーンがやたら短いブー(ロバート・デュヴァル)。
ジェムがブーに助けられるシーンも、映像的にも心理的にも盛り上がるシーンともいえず。

むしろブーが関連するところとしては、ジェムが、ブーがこっそりプレゼントしてくれるものを集めているくだりが印象に残る。
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そして、オープニングの映像でも使われる、ジェムの宝物が入っている箱。まさにノスタルジックの真骨頂。

メイキングを観ると、細部までいろいろ気を使って作られた作品だということは伝わっては来る。
映画としてまとまってはいるが、面白い点を見つけるのが難しく、自分の好みとは相反する映画だった。

原題: To Kill a Mockingbird
製作: アラン・J・パクラ
監督: ロバート・マリガン
脚本: ホートン・フート
原作: ハーパー・リー
撮影: ラッセル・ハーラン
美術: ヘンリー・バムステッド、アレクサンダー・ゴリツェン
音楽: エルマー・バーンスタイン
衣装: ローズマリー・オデル
出演: グレゴリー・ペック(アティカス・フィンチ)、メアリー・バダム(スカウト、娘)、フィリップ・アルフォード(ジェム、息子)、ジョン・メグナ(ディル・ハリス、兄妹の友達)、ローズマリー・マーフィ(モーディ・アトキンソン、フィンチ家の向かいに住む女性)、ロバート・デュヴァル(アーサー・ラドリー、“ブー”というあだ名で恐れられるフィンチ家の不気味な隣人)、ルース・ホワイト(デュボース夫人、フィンチ家の隣家に住む不機嫌な老婦人)、ブロック・ピーターズ(トム・ロビンソン、暴行容疑で起訴された黒人)、ポール・フィックス、コリン・ウィルコックス(メイエラ・バイオレット・ユーエル、トムに暴行を受けたと主張する白人の娘)、リチャード・ヘイル、ウィリアム・ウィンダム、フランク・オーヴァートン(ヘック・テイト、町の保安官)、エステル・エヴァンス(キャルパニア、フィンチ家の家政婦の黒人女性)、ジェームズ・アンダーソン(ボブ・ユーエル、メイエラの粗暴な父親)、キム・スタンリー(ジーン・ルイーズ・フィンチ、大人になったスカウト。物語の語り手)、クラハン・デントン(弁護費用の一部をクルミで支払っている)
編集: アーロン・ステル
配給: ユニバーサル映画
公開: 1962年12月25日(米)、1963年6月22日(日)
上映時間: 129分
製作費: $2,000,000
 
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