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内容をまったく知らないまま観たが、それなりに楽しめた。
逆に云うと、めちゃくちゃ楽しめる内容とまではいかなかった。

都知事が東京への原発の誘致を宣言するという話で、原発の安全性や稼働状況、国の取り組みなどについて、時間を使って説明してくれている。

2011年3月の、東日本大震災を発端とした福島原発事故の、10年ほど前に作られているというのが何よりも面白い。
少なくとも素人目には、よく出来たストーリーで、てっきり原作があるのだろうと思っていたが、どうやらオリジナルの脚本のよう。

しかし、せっかくの良い題材なのに、それを生かしきれていない物足りなさは残る。
盛り上げ方が下手だったり、変な笑いを取りにいっていたり。
そこが、『太陽を盗んだ男』との違い。

それでいて、多くの人に見てもらいたい内容ではある。
原発について知るという点からも、人間は過去のことはすぐ忘れるという点からも。

以下、ネタバレを含め、印象に残ったシーンを振り返る。

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風刺的、ブラックコメディ的要素も散りばめられ、ところどころ痛烈、痛快。

役所広司演じる都知事は、都民のことを”世界一無関心”と評するが、そう言われると返す言葉がない。
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敢えてそうしているのかもしれないが、都知事は終始うさん臭い。
表情や話し方、あくびをするなどの態度等もあるが、赤いネクタイが助長している気がしてならない。この色選びも、演出の意図的なものなのだろうか。

 
輸送中のプルトニウムトラックや都庁のホームページが少年(後藤昂)にジャックされるというくだりは、いまいちリアリティに欠ける。
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このシーンでは、なんとなくアインシュタインの写真が飾ってあるな~ぐらいに思っていたが、原発の元となる量子力学の発展にアインシュタインが寄与していることを考えると、それなりの意図があるというわけだ。

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吉田日出子が演じる泉環境局長は紅一点。やや舌足らずながらも、しゃきしゃき話すキャラクターは好感度高い。
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泉のトイレの出を待って、話しかける津田(段田安則)。都知事の特別秘書である及川が泉を頻繁に訪ねていた理由を問うと、変な勘違いの返しをする泉。
これはあまりにベタ過ぎる。。。必要なんだろうか、これは。トイレの紙をまきとる音も凄い立てていたし。

大野(左、岸部一徳)、石川(右、菅原大吉)のダメっぷりはある意味見事。
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もちろんコメディなのはわかるが、本当にこんなのが実際に都政の幹部だったらと思うと笑えない。

そんなちぐはぐな都政の幹部だが、変な一体感は持っており最後は一つにまとまる。
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ベタな一致団結の構図。嫌いじゃない。

副知事が呼んだ東大の榎本教授(綾田俊樹)は、その格好が不必要にユニーク。
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とくにこの、ロシア風の帽子とコートの突飛さ。ここも変な笑いをとりにいっている感が強いが、彼のとぼけた表情にマッチしていて許せる。
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醸し出す雰囲気にまったくシリアスさが感じられない。
いや~、好きだなあ、この役者さん。

 
都庁の会議室に集まるメンバー以外も、味があるキャストを揃えている。

お金に困ってそうなアル中の運転手役、塩見三省。トラックのハンドルを握る姿や作業着姿も様になっていた。
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有楽町と新橋の間の高架下にありそうな酒類の自販機が並んでるところで、運転の合間に周りを少し気にしつつワンカップを飲む姿が堪らない。
そしてこの後消臭スプレーを口にシュッシュッとする姿の滑稽さ。最終的には運転中もカップ酒を次から次へと。

原発の安全性を一番謳っている専門家として都知事が利用しているのが、原子力安全委員会の松岡(益岡徹)。この皮肉。
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一秒でも遅れたら金を払わないと運転手を脅す松岡。これまた過剰なキャラクター。

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登場シーンは短いが、印象に残る渡辺哲。
後ろに放射性廃棄物が入った黄色い缶が並べられているのは、あざと過ぎる気もするが、絵になるんだから仕方ない。

 
それにしても、ひとつの見せ場である、段田安則演じる副都知事が、都知事の原発誘致の真意に気づくシーンだが、盛り上げ方が今ひとつなのがもったいない。
ラストの、輸送していたプルトニウムが水に濡れてしまう様子を映しているシーンを含め、一言で言えば盛り上げ下手。

なお、MOX燃料を福井の原発へ移送しようとしてことが住民にばれ、海側が見張られている中で、松岡らが東京経由陸路で運ぼうとしていることを聞いた都知事が、「それじゃまるで一の谷の合戦じゃないか」と呆れるシーンがある。

自分のように日本史に弱い方のために記しておくと、一の谷の合戦とは、平安時代末期の源平の戦いの一つで、海側を固める平氏に対し、義経率いる源氏の部隊が意表を突いて一ノ谷(現在の兵庫県神戸市の須磨海水浴場のあたり)の裏手の断崖絶壁から坂を駆け下って攻め入り、戦況を一気に有利に変えた戦いのことである。

製作総指揮: 北側雅司、横濱豊行、川上國雄、石川富康
製作: 池田哲也、石原真、西健二郎、福田豊治
監督: 山川元
脚本: 山川元
撮影: 北澤弘之
美術: 稲垣尚夫
音楽: 崎谷健次郎
主題歌: 「TOMORROW」
出演: 役所広司(天馬都知事)、段田安則(津田副知事)、平田満(笹岡産業労働局長)、田山涼成(佐伯政策報道室長)、菅原大吉(石川都市計画局長)、岸部一徳(大野財務局長)、吉田日出子(泉環境局長)、綾田俊樹(榎本教授)、徳井優(及川特別秘書)、益岡徹(松岡原子力安全委員)、塩見三省(中村、トラック運転手)、後藤昂(青山透、トラックをジャックする少年)、渡辺哲(渋谷、中村の同僚運転手)、小林麻子(広山政策報道室職員、佐伯からの電話の指示で都庁のホームページをチェック)
編集: 阿部亙英
製作会社: 「東京原発」フィルムパートナーズ(グランプリ、バサラ・ピクチャーズ、日活、衛星劇場)
配給: ザナドゥー
公開: 2004年3月13日(日)
上映時間: 110分
 
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