tokyosonata

好きな日本人監督のうちの一人なのに、ひっさびさに観る黒沢清作品。
何以来だかの記憶さえないほど久しぶり。

彼の作品は、正直、ストーリーはさほど重要ではない。
もちろん意味不明だと見ていられないが、明快な起承転結があることは期待していない。

本作も筋は通っているが、もやっとしたものは抱えている。
説明的な描写が少な目。

人間の弱さ、激情的なところをつついていて、嫌な気分にもされつつ、「そうそうこれこれ」と思ってしまう自分もいる。
それは、人間の愛おしさも”さらっと”描いているからなのだろう。
愛おしさ推しが強過ぎると、説教臭くなる。

家族内での父親への不満をみんな抱えながら、それでもそれを普段は抑えて生活している。
それがふとした瞬間に露出する。

線路脇の狭そうな一軒家。
精神に歪みが出そうな立地ではある。
海外の人が描いたような、ステレオタイプな東京の住まいではある。

 - ad -

キャストも悪くない。
香川さんは得意そうな役で、こういう人が自分の親だったら鬱陶しい感ハンパない。

小泉今日子も、年相応の崩れた、表情にハリがない感がハマってる。
おそらく小泉今日子クラスの素材だから崩れてても問題なく見れるが、普通の人だったらキツいことになってるのだろう。

小泉今日子が海辺の小屋から家へ帰るとき、ほぼ目を閉じたままゆっくりゆっくり歩いてて、そこに陽があたってくるときの表情が印象的。
家庭内で揉めて、父親としての威厳を守ろうとする香川照之に対する軽蔑した表情もナイス。

子役二人、役所広司、井川遥、津田寛治に、ほんのチョイ役で出てくるでんでんと、それぞれ悪くはないが、やはり夫婦二人の印象が圧倒的に強い。
次男(井之脇海)の学校の先生役のアンジャッシュ児島には、ちょっと笑ってしまったが。

長男(小柳友)が米兵に志願して渡米するバスの待合室で、小泉今日子に「離婚しなよと、それが気になってる」と言うところ。
息子と母親の関係性ってこうだよなと実感。
父親のだらしなさを糾弾して、母親を守る。

父、母、次男の三人がそれぞれやんちゃして、空き巣にやられた家にそれぞれ朝帰り。
そこで朝食をとる。

ラストは1曲まるまる次男が演奏するシーンを流してのエンディング。
美しく終わってる。

車に轢かれた香川照之が道路脇で横たわったまま動かず、死んでるように見えたまま終わっていたら、作品全体の印象は相当変わるだろうなと、ふと思った。

駒場東大前や、おそらく恵比寿の公園など、なんとなく知っている場所が使われていて、個人的に懐かしい気持ちにもなった。

ひどい話なんだけど、日本人なら全否定はできず、懐かしさも感じる。
救いがなさそうで、ある。
そのバランスを楽しめる映画。

@DVD

製作総指揮:小谷靖 / ミヒャエル・J・ヴェルナー
製作:木藤幸江 / ワウター・バレンドレヒト
監督:黒沢清
脚本:マックス・マニックス / 黒沢清 / 田中幸子
撮影:芦沢明子
美術:丸尾知行 / 松本知恵
音楽:橋本和昌
衣装:宮本まさ江
出演:香川照之 / 小泉今日子 / 小柳友 / 井之脇海 / 井川遥 / 津田寛治 / 児嶋一哉 / 役所広司