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エリック・ロメールといえば、「海辺のポーリーヌ」や「緑の光線」で有名なフランス人監督。

しかし、なぜかTSUTAYA(少なくともDISCAS)には有名作が置いておらず、この「三重スパイ」のみレンタルすることができた。

フランスで2004年に公開されてから、なんと8年も経ったのちに日本で公開されている。
それはひとえに、商業的には日本ではうまくいかないと踏まれたからなのだろう。

 
しかして、その内容はというと、まずその会話の多さに驚く。
もともとフランス映画全般において会話が多いとは言われているが、本作はその中でもなかなかな会話劇である。

しかも、第二次世界大戦直前から戦中にかけてのフランスが舞台で、ロシア、フランス、ドイツ、スペインを横断しての、ファシズム、共産主義、人民戦線等の思想的・政治的な話が非常に多い。
「三重」の「スパイ」というタイトルであるからには、この辺りの事情がわかっていないと、本作の話の肝の部分への理解がぼんやりとしてしまう。

例えば、フョードル(セルジュ・レンコ)がロシアにいた時は白軍にいたと聞いてもピンと来ないし、アパートの上の階に住む教師夫婦がどういう思想の持主で、旦那のほうが読んでいた新聞をフョードルが揶揄する意味もよくわからない。

以下、ネタバレ含む。

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歴史がわかっていないと話が理解しづらいことに加え、スパイでありながら微妙に不用意で、人を小馬鹿にした態度が鼻につくフョードルのキャラクターが生理的に受け付けづらかったことで、特に後半、話に入っていけなかった。

フョードルが妻のアルシノエ(カテリーナ・ディダスカル)にトラブルに巻き込まれたことを打ち明け、にわかにサスペンス色が出てくるが、いかんせんフョードルに共感できないから、こちらの緊迫感も低いまま。

フョードルが姿を消すのはいいとしても、とばっちりを受けて刑務所に送られ、病気が原因で足を切断し、その後死亡してしまうアルシノエへほとんど触れないラストの流れには虚を突かれた。
将軍を裏切ったフョードルをアルシノエが責めるシーンで見せた、人間的かつセンチメンタルな感情の吐露のようなものは、フョードル失踪以後には誰も表すことはなく、淡々とした気持ちでエンディングを迎える。

前半は、アルシノエが描く絵だったり、ボリス(グリゴリー・マヌコフ)が無償で貸してくれた別荘の雰囲気だったりに、フランス映画の柔らかさを感じて楽しめたが、後半に入って、途端に気持ちのやり場に非常に困る作品となってしまった。

以下は、バージョン違いのDVDパッケージデザイン(英語版)。
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製作: フランソワーズ・エチュガレー / フィリップ・リジョワ / ジャン・ミシェル・レイ
監督: エリック・ロメール
脚本: エリック・ロメール
撮影: ディアーヌ・バラティエ
美術: アントワーヌ・フォンテーヌ
衣装: ピエール・ジャン・ラロック
出演: カテリーナ・ディダスカル(Arsinoé) / セルジュ・レンコ(Fiodor) / シリエル・クレール(Maguy, Boris’s wife) / グリゴリー・マヌコフ(Boris) / ディミトリ・ラファルスキー(Gen. Dobrinsky) / ナタリア・クルーグリー(La Générale) / アマンダ・ラングレ(Janine, Greece teacher) / ジャンヌ・ランブール(Dany) / エマニュエル・サランジェ(André, History teacher) / ヴィターリー・シェルメ(Alexis, probably Fiodor’s nephew) / Emilie Fourrier(assistant seamstress)
公開: 2004.2.13(ベルリン映画祭)、2004.3.17(仏)、2012.4.21(日)
 
【世間の評価】 ※2016.5.11時点
CinemaScape: 3.7/5.0 (9人)  
Yahoo! 映画: 3.56/5.00 (9人)
IMDb: 6.5/10 (1,141人)
 
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