復讐するは我にあり

ノンフィクション作家、佐木隆三の原作。

冒頭、パトカーの後部座席でふてぶてしく鼻歌を歌っている榎津(緒形拳)が映されるので、いずれはこいつは捕まるんだなということを知りながら、それまでの犯罪を一つ一つ振り返っていくストーリー。

粗野で強引ではあるが少なからぬ魅力のある緒形拳。別れの時は揉めるがバーのママ(絵沢萠子)、元ストリッパー(白川和子)のほか、実家に押しかけて結婚を迫る嫁の加津子(倍賞千恵子)も最初は惹かれているし、宿屋「あさの」の女将のハルはメロメロ。凄まじい精力を誇り女を寝かさないタフさも繰り返し描かれている。

一方で、ないがしろにされてきた嫁の加津子は、義父である三國連太郎を慕う。三國連太郎はキリスト教信者で罪の意識を持つが、自分も義理の娘に惹かれる。三國連太郎の嫁(加津子の義母)は静かながらもそれに嫉妬心を燃やし……といった、長崎の五島出身ゆえのキリスト教という背景に、背徳的な関係性という、不思議な物語のバックグラウンドを作り上げている。

以下、ネタバレあり。

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倍賞千恵子と三國連太郎の入浴シーンがエロスの極みだが、それ以外にも濡れ場シーン多数。浜松も舞台になっていたこともあり、うなぎが出てくるが、まさに今村昌平監督の「うなぎ」を思い起こさせるエロスの原点がここにあった。

ギャンブル好きで元殺人犯であった宿屋の女将の母親(清川虹子)と、榎津の関係性も面白い。

その他、見知った役者が大挙して出演している。先日観た「眠狂四郎勝負」で強烈な演技をかましていた加藤嘉が殺される弁護士役だったり、「しとやかな獣」で銀座のママ役として集金に来ていたミヤコ蝶々が榎津の母役だったり。

タイトルのとおり、何かへの復讐のための犯罪なのだろう、と思って見ていると、結局最後まで動機はよくわからないまま肩すかしを喰らう。そこに気持ち悪さは多少あるものの、大胆かつ、時々激情的にも見え、細かい動きも見せる緒形拳の胸の内のわかりにくさは、納得でもある。
(観終わった後に知ったことだが、「復讐するは我にあり」とは、新約聖書の中の「愛する者よ、自ら復讐すな、ただ神の怒に任せまつれ。録して『主いひ給ふ、復讐するは我にあり、我これに報いん』とあり」という言葉の一部で、「我」は「神」を表わすとのこと。すなわち悪人に報復を与えるのは神であるとのこと。ここにキリスト教との接点が出てくるわけだ。だから英題も聖書の中の言葉そのものの「Vengeance is Mine」になっている。)

主演緒形拳の魅力、予想のつかないストーリー展開、豪華な役者陣、背徳的なエロスと、きっとタランティーノも好きだろうと思わせる切れ味の鋭い秀作。

vengeance is mine
なお、こちらが英語版のジャケットデザイン。
原題は「Vengeance is Mine」。日本版よりややスタイリッシュで犯罪者色が強い。

英題: Vengeance is Mine
製作: 井上和男
監督: 今村昌平
脚本: 馬場当
原作: 佐木隆三
撮影: 姫田真佐久
美術: 佐谷晃能
音楽: 池辺晋一郎
出演: 緒形拳(榎津巌) / 三國連太郎(榎津の父) / 小川真由美(ハル、「あさの」の女将) / 倍賞美津子(加津子、榎津の嫁) / 清川虹子(ハルの母) / ミヤコ蝶々(榎津の母) / 白川和子(元ストリッパー) / 殿山泰司(専売公社集金係) / 絵沢萠子(バーのママ、おにぎり&たくあんを食べての絡み) / 根岸とし江(現:根岸季衣、ステッキガール、通報者) / 河原崎長一郎(質屋主人) / 加藤嘉(河島弁護士) / 浜田寅彦(吉野調査官) / フランキー堺(河井警部) / 馬場大八(専売公社集金係) / 北村和夫(ハルの旦那) / 火野正平(ハルの麻雀友達) / 佐木隆三(「あさの」の客) / 金内喜久夫(駅の助役、三國連太郎の手引きで加津子と寝、後に榎津に強請られる) / 小野進也(海軍主計中尉、戦時中に三國連太郎を罵倒) / 菅井きん(千葉裁判所で被告の母、榎津に騙される) / 阿部寿美子(千葉裁判所、保護司) / 石堂淑郎(千葉裁判所、裁判長) / 梅津栄(榎津の指名手配ポスターを持って「あさの」を訪れる警察官) / 法月一生(浜松のタクシー運転手)
配給: 松竹
公開: 1979年4月21日
上映時間: 140分
 
【世間の評価】 ※2016.3.23時点
CinemaScape: 3.7/5.0 (159人)  
Yahoo! 映画: 4.23/5.00 (111人)
IMDb: 7.9/10 (4,079人)
 
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