volver
私が、生きる肌』以来に観る、アルモドバル監督作品。彼の作品は多くは観ていないものの、どの作品も満足いく内容だったので期待大。なお、本作も知人の女性が勧めてくれた一作。

 
観始めてすぐ感じるのは、なぜか落ち着くということ。
フランスやアメリカの映画ももちろん嫌いではないが、スペイン映画は登場人物の顔を見ているとやたらと落ち着く。もしかすると日本映画以上かもしれない。その原因が、映像から感じられる風土にあるのか、濃い目の顔立ちなのかはわからないが。

登場人物のほとんどが女性。特に女性だけしかいない環境でもないのに、これほど女性にフィーチャーしている映画も珍しい。

サスペンスの要素があることで集中力は途切れないし、主役のライムンダを演じるペネロペ・クルスの魅力にも惹かれるし、母親(カルメン・マウラ)が抱えてきた秘密も気になるしと、脚本と役者が見事。
また、ライムンダと娘(ヨアナ・コボ)を初めとする登場人物のビビッドな服装、フォードのステーションワゴンの赤、色とりどりの野菜など、スペインらしい色使いが随所に見受けられ目を楽しませてくれる。

全体的には、「サスペンス」「ペネロペ・クルスの色気」「家族」「軽いファンタジー」で成り立っているという印象。
そのバランスが良く、ファンタジー要素がサスペンス色を抑えているし、家族愛で暖かい気持ちにもなれる。

以下、ネタバレあり。

 - ad -

ファンタジーっぽさを出している要素はいくつかあるが、その一つに(女性同士の)挨拶のキスがある。本作では、普通の欧米の映画のものと異なり、「チュッチュッチュッチュッ」と片側につき三~四度ぐらいキスをする。スペインの普通の習慣がそうだという可能性もあるが、おそらくこの映画では敢えて印象的に描いているのではなかろうか。

その他にも、殺人を犯した母親が警察をさほど恐れることもなく叔母の家で隠れて暮らしていたり、冒頭の墓掃除のシーンで強く描写されていたが風がやたら強い街という設定だったり、隠れて美容室を営む姉のソーレ(ロラ・ドゥエニャス)が母をロシア人ということにしてアシスタントにしたりと、ファンタジー要素がそこかしこに散りばめられている。

volver_03
ペネロペ・クルスはさすがにやや歳をとった感じはするが、(もちろん、そういう演出&メイクのせいだろうが。実年齢は32歳前後)、胸のインパクトが半端ない。作中でも母親に昔からそんなに大きかったっけといじられていたが。さすがにスペイン人で同性といえども、あれは気になるんだな。

娘のパウラは、落ち着いているからか老け顔ゆえか、最初はどう見ても15歳という設定には見えないうえ、どことなくロナウジーニョに似ていて違和感満載だったが、だんだん馴染んで途中からはむしろ可愛くすら見えるように。

volver_02
姉のソーレも、最初はカタブツに見えたが、だんだんとチャーミングさが伝わってくる。

volver_04
ライムンダの泣きそうな顔もチャーミング。

volver_05
数多く登場するキスシーン。

観ている最中はそこまで意識していなかたが、こうやって思い返すと、ペネロペ・クロス劇場になってしまう。

volver_01
タイトルにもなっている。ボルベール。オーナーの許可をとらずに勝手にレストランで営業をするライムンダだが、映画クルーの打ち上げの場で、スペインらしいタンゴ曲「ボルベール」を披露する。そこが吹き替えられていたのが残念ではあった。多少下手だとしても、本人が歌っていたら評価はさらに上がっていただろう。

娘の出生の秘密、母親の死の秘密、娘が父親を殺してしまったことによるサスペンスなど、いくつかの話が絡み合うが、最終的には母親とライムンダの親子に集約していく。

母親と再会して以降、それまでとは打って変わって母親にべったりになるライムンダ。隣人のアグスティーナ(ブランカ・ポルティーリョ)は末期の癌で闘病しているが、母は(自分が小屋に火をつけて殺した夫の浮気相手の娘である)彼女の面倒を見るといい、ライムンダには毎日時間を作るからと言って、家に返す。そして再び母が部屋に戻ろうとするところでエンディング。

叔母のパウラ(チュス・ランプレアベ)に続いてアグスティーナも看取ろうとする母親の心根の優しさと、母と娘の間の愛情を感じながら、優しい気持ちで観終わることになる。

いろんな要素を取り入れながらも、バランスをしっかりと保っている。この監督の映画は、もっと観てみたいなと思わせる魅力に満ちた一作だった。

最後に、日本版のチラシデザイン。
volver_jp
「女性讃歌」か。確かに、そうだった。
デザイン的には、上のパッケージデザインのほうが自分は好み。

製作総指揮: アグスティン・アルモドバル
製作: エステル・ガルシア
監督: ペドロ・アルモドバル
脚本: ペドロ・アルモドバル
撮影: ホセ・ルイス・アルカイネ
美術: サルバドール・パラ
音楽: アルベルト・イグレシアス
衣装: ビーナ・ダイゲラー
出演: ペネロペ・クルス(Raimunda) / カルメン・マウラ(Irene, mom) / ロラ・ドゥエニャス(Sole) / ブランカ・ポルティーリョ(Agustina) / ヨアナ・コボ(Paula, daughter) / チュス・ランプレアベ(Paula, aunt) / アントニオ・デ・ラ・トーレ(Paco, husband) / カルロス・ブランコ(Emilio, restaurant’s owner) / イサベル・ディアス(Regina, well-rounded cocktail lady) / ニエベス・サンス・エスコバル
配給: ギャガ(日)
公開: 2006年3月17日(西)、2007年6月17日(日)
上映時間: 120分
 
【世間の評価】 ※2016.6.3時点
CinemaScape: 3.9/5.0 (81人)  
Yahoo! 映画: 3.83/5.00 (452人)
IMDb: 7.6/10 (75,866人)
 
@Amazon Prime Video