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初めて接する松尾スズキの監督作品。内容をまったく知らないままに見たところ、意外と重い内容に驚いた。

 
見る人を確実に選ぶ映画だろう。
コメディ要素も多いが、重いところはかなり重い。

個人的にはこういう、人の嫌なところと良いところが4:6ぐらいで描かれていて、しっかりと嫌な気持ちにもなり、そのぶん良い気持ちにもなる映画はかなり好きだ。

設定もありきたりではない。精神科への入院ぐらいだったらよくあるテーマだが、ODことオーバードーズだったり、過食症だったり拒食症だったり、強制入院だったり、隔離室での五点拘束だったり、あまり知らない世界。

内田有紀演じる明日香の、いい加減かつお調子もののキャラクターしかり、その本人の性格に原因が濃厚にありそうな親との関係しかり、前の旦那(塚本晋也)との関係性しかり、いずれもそれなりにリアリティがある。

クドカン演じる今の旦那も、放送作家という設定がハマっているし、彼がぶち込んでくる笑い(これが大人計画っぽさらしさなのか?)により、作品がただのシリアス一辺倒にならず、観ている側の心のバランスも保たせてくれた。

以下、ネタバレも含め、振り返ってみる。

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明日香の面倒臭さ(作中の言葉で言うなら、鬱陶しさ)、だらしなさがこれまたリアリティあり過ぎて、いたたまれなくなってくる。胃洗浄等で顔にその跡がついたままの内田有紀の姿も地味にインパクトあって良い。

ストーリーの構成的には、旦那のてっちゃんの口から、OD直後の様子の真相が徐々に明らかになっていくのが、意外性があって良かった。
また、入院患者の中では比較的まともそうだった栗田(中村優子)が、退院後にまた救急車に乗って運ばれてくるのも、ベタではあるのだろうが業の深さを感じさせて味わい深い。

 
登場人物のなかで、ダントツのインパクトを与えてくれたのは大竹しのぶ演じる西野(過食嘔吐型の摂食障害)。
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嫌な奴の役を見事に演じている。

蒼井優が演じるミキも悪くないが、キャラがさほど強くなく、個人的には物足りなさもあった。それでも、一番温かみが感じられる役柄であり、クワイエットルームの無機質さを緩和してくれる存在で、この作品には不可欠な役柄に感じた。
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点滴ともに移動する二人。こうして見ると、内田有紀は健康的。

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赤ピンクの服のミキ。サエ(高橋真唯)のジグソーパズル作りを手伝う。

 
そして、最優秀助演男優賞を授けたいクドカン。
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彼が明日香に語る話の中での「ガ〇ジャと警察が一番近づいた瞬間」「マトリョーシカがマトリョーシカであることに感謝」「(明日香にお尻触られながら、落ち着く?と聞かれて)落ち着……かない。中腰だし」などなどのセリフと演技は光っていた。
クドカンは役者としてもいいんだということを認識させられた。

 
控えめながらよかったのがナース役の平岩紙。
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キラキラした目の動きに魅力があるし、セリフを言った後に、うんうん頷く姿がツボだった。大人計画の人だけあって芝居に安定感がある。
(こう見ると、クシャっとした髪型の内田有紀も悪くない)

りょうさんは冷たい婦長的な役がハマっていた。
妻夫木くんは登場シーン少なめながら楽しんでそうなのは伝わってくるも、面白みのある役柄ではなかった。

 
人は誰もが心が揺れる。そのきっかけは人間関係が多いのだろう。夫婦、家族…
そのことを主張が強過ぎないバランスで、まざまざと見せつけてくれる作品。

観ている側の心も揺れる。
それが人間。

 
最後に、バージョン違いのチラシデザイン。
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こちらだと、血が通っている映画のイメージ。上の、無機質な病室とだいぶ印象が異なる。

原作: 松尾スズキ
監督: 松尾スズキ
脚本: 松尾スズキ
音楽: 門司肇、森敬
撮影: 岡林昭宏
出演: 内田有紀(佐倉明日香)、宮藤官九郎(焼畑鉄雄)、蒼井優(ミキ)、りょう(江口、看護婦)、妻夫木聡(コモノ)、大竹しのぶ(西野)、平岩紙(山岸、看護婦)、中村優子(栗田、明日香と同部屋)、高橋真唯(サエ、ブルジョワ部屋、ピアノ)、箕輪はるか(患者)、近藤春菜(明日香の友人)、庵野秀明(松原医師)、塚本晋也(明日香の元旦那)、筒井真理子(金原、和服)、馬渕英俚可(チリチリ)、宍戸美和公(カロリー)、平田満(俳優)、徳井優(白井医師)、伊勢志摩(白井医師の声)、峯村リエ(婦長)、武沢宏(芸人)、河井克夫(内科医)、俵万智(旅館の女将)、しりあがり寿(旅館の番頭)、川勝正幸(旅館の板前)、しまおまほ(旅館の仲居)
編集: 上野聡一
配給: アスミック・エース
公開: 2007年10月20日(日)
上映時間: 118分
 
【世間の評価】 ※2016.11.22時点
CinemaScape: 3.7/5.0 (75人) 
Filmarks: 3.4/5.0 (6,966人) 
Yahoo! 映画: 3.87/5.00 (783人)
IMDb: 7.2/10.0 (580人)
Rotten Tomatoes(Critics): -/10.0 (-人)
Rotten Tomatoes(Audience): 3.6/5.0 (325人)
 
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