じごくでなぜわるい
さすがに見応えがあった。
ストーリーをまったく知らない中で見たが、やくざが山ほど登場して、ばんばん人は死ぬが、シリアス度合いは低く、かなりのコメディ。
右のチラシにある「世界が笑った」に偽りなし。

とはいえ、園子温作品ゆえ、ただ笑いがあるだけののほほんとした話では当然ない。

なんというか、例えばタランティーノの作品を観ていて、これやり過ぎだろと苦笑してしまうシーンがあるが、園子温はそれをさらにデフォルメし、観客に笑っていんだよということを明確に伝えてくれる。そんな映画。
アメリカにおけるゾンビ映画に、ちょっと似たテンションなのかもしれない。

大勢が出演している役者陣も、それぞれ見せ場が用意されていて、皆生き生きと演じている。
ただ、その大勢いる中で、コウイチ(星野源)だけは唯一リアルの人っぽくて(=ゾンビではなくて)、彼の痛みや怪我だけはリアルに感じられた。最期はだいぶコメディ寄りになってしまったが。

以下、ネタバレあり。

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印象に残るシーンと役者は山ほどある。

武藤ミツコを演じる二階堂ふみはいい味を出している。胸元が露出している服装ではあるが、セクシーさは控えめ。
ただ、彼女が「全力歯ぎしり」の歌を歌うところだけは違和感が強かった。子役や友近や堤真一が歌っても大して違和感がないのに。不思議。
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ビール瓶の破片を口の中に含ませてからの血だらけのキスシーン。
観ている最中は気づかなかったが、写真でみると星野源の表情に目が行ってしまう。良い表情。

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笑えるシーンは数多く登場するが、なかでも太った二人のカメラマンカップル(石井勇気&春木美香)が撮りながらマシンガンをぶっ放すところが一番笑えた。
カメラマンが役者側に影響を与えるなんてもってのほかって話の最上級。

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ただのコメディに成り下がらせない砦は武藤親分を演じる國村隼が担っていた。

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池上を演じる堤真一は心底楽しそうに見えた。

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監督役の彼(長谷川博己)も前半はややキモい役柄だが、現場に行ってからの生き生きした表情は見事。
対決のシーン開始前の、間の取り方は絶妙で、漲る緊張感の高まりがビンビン伝わってくる名シーンだった。

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子ども時代のミツコ(原菜乃華)が、血が溢れる部屋を白い衣装で池上目がけて滑っていくシーン。演出が過剰で素敵。

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原菜乃華は「全力歯ぎしり」の歌や踊りだけでなく、存在感でも大事な役割を果たしていた。

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池上の女を演じるつぐみ。一瞬しか登場しないが、目を引く。

映画を撮ろうという親分に対し、「おれらヤクザですよ」という彼(本城丸裕)の存在感もなかなか。音声の責任者としてきっちり仕事している様も良かった。
それにしても、友近をよくここにキャスティングしたものだ。どうしてもコントに見えてしまう。

その他にも、園子温作品でよく顔を見る渡辺哲や神楽坂恵、裴ジョンミョン(ペ・ジョンミョン)ら、さらには小劇場でお馴染みの黒田大輔、ぼくもとさきこなどなど、場を盛り上げてくれる役者が勢ぞろいで楽しみはたっぷり。

ラスト、テープを抱えて道路を走る監督の平田。どうやって終わるんだろ、こいつ車に轢かれるんじないかと思っていたら、「はい、カット」の声がかかり、彼は走るのをやめフレームアウトし、スタッフがフレームインし、終了。
そうですか、、そう終わりますか、、という終わり方。

全体的に、女装とパンチラと言った『愛のむき出し』の荒唐無稽さよりは、許容できる笑いの方向性。
とはいえ、コメディ押しでもないし、恋愛もわかりやすく前面に出てもいないし、見終わった直後の心の持ちようが難しい映画ではある。

それでも観てよかったと思えるのは、園子温しか作れない、見応えのあるエンターテイメントを見れた充実感が確かにあるところだろう。

最後に、他のチラシ・DVDデザインを。
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クールバージョン。

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アニメバージョン。

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ヤクザ映画風バージョン。

監督: 園子温
脚本: 園子温
撮影: 山本英夫
美術: 稲垣尚夫
音楽: 園子温 / 井内啓二
出演: 國村隼(武藤大三) / 堤真一(池上純) / 長谷川博己(平田純:現在) / 星野源(橋本公次) / 二階堂ふみ(武藤ミツコ:現在) / 友近(武藤しずえ) / 原菜乃華(武藤ミツコ:過去) / 中山龍也(平田純:過去) / 春木美香(谷川カメラマン:現在) / 青木美香(谷川カメラマン:過去) / 石井勇気(御木カメラマン:現在) / 小川光樹(御木カメラマン:過去) / 坂口拓(佐々木鋭:現在、ブルース・リー) / 中田晴大(佐々木鋭:高校時代) / 渡辺哲(木村刑事) / 尾上寛之(田中刑事) / 板尾創路(増田、看板取り付け、先輩) / 裴ジョンミョン(佐藤、看板取り付け) / 石丸謙二郎(プロデューサー) / でんでん(中華料理屋店主) / ミッキー・カーチス(映写技師) / 江波杏子(モギリ) / 永岡佑(ミツコの前の男) / 神楽坂恵(ジュンコ) / 岩井志麻子(マサコ) / つぐみ(池上の女) / 成海璃子(平田が言い寄る女) / 水道橋博士(オマワリ) / 山中アラタ(車内で公次を殴っていた男) / 市オオミヤ(坊主頭) / 本城丸裕(白髪まじり) / 仁村俊祐(元気なチンピラ) / 山本亨(池上の手下) / 諏訪太朗(池上の前の親分) / 深水元基(ファックボンバーズ行きつけのお店のバーテン) / ぼくもとさきこ(ウェイトレス) / 黒田大輔(映画スタッフ) / 吉田エマ(ミツコの代役の役者?) / 福田温子(看守) / 菊池英之 / 土平ドンペイ / 古藤ロレナ(ファックボンバーズの取り巻きBUKKAKE GIRL、大月まゆ) / 尾畑美依奈(同、真木マーキ) / 今村美乃(同、アサノアツコ) / 松下美優(靴屋の店員) / 麿赤兒(映画の登場人物) / 波岡一喜 / 橋本まつり / 皆川尚義 / 清水智史 / 野中隆光 / 中泉英雄 / 北村昭博 / 児玉拓郎 / 伊藤凌
主題歌: 星野源「地獄でなぜ悪い」
編集: 伊藤潤一
配給: キングレコード / ティ・ジョイ
公開: 2013年9月28日(日)
上映時間: 130分
 
【世間の評価】 ※2016.6.6時点
CinemaScape: 3.6/5.0 (44人)  
Yahoo! 映画: 3.47/5.00 (953人)
IMDb: 7.2/10 (4,151人)
 
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