ツゴイネルワイゼン

80年代前半を代表する日本映画の一つで、日本映画史に燦然と名を残す本作、ようやく観ることができた。
鈴木清順の監督作は、相当昔に『夢二』を見たことがある程度。

 
夢か現かがわかりにくいストーリー、間をたっぷりとる演出で、ついついウトウトして、見終わるまでに時間がかかってしまった。

だからストーリーも、頭にきちんとは残っていない。

前半は中砂(原田芳雄)のワイルドさと、門付け(日本の大道芸の一種で、門口に立ち行い金品を受け取る形式の芸能の事をいう。本作で初めてその呼び方を知った)の盲目の三人。
後半は青地(藤田敏八)が醸し出す言葉少なな独特の雰囲気と、切り通し(舞台は鎌倉の釈迦堂口の切通とのこと。残念ながら現在は立ち入り禁止)の景色が印象に残る。

それが理解できるかどうかは別として、一シーン、一シーン、いろんな思いが込められていることが強く伝わってくる作品ではあり、個別のシーンでも強い印書を残す箇所は少なくなかった。

例えば、青地の嫁である周子(大楠道代)が中砂とともに周子の妹・妙子(真喜志きさ子)を見舞いに訪れた際、中砂の目に入ったゴミを周子が舌で舐め取るという強烈なシーン。
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あまりエロさは感じさせないのだが、さすがに印象には残る。

また、周子が中砂に迫られ、愛撫されるこのシーン。
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このシーンでも、エロスよりも、周子の身体に浮かぶ赤い湿疹に目を奪われる。

その他にも、小稲や妙子のヌードが登場するシーンもあるのだが、総じてエロスは感じさせない作りになっている。

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たびたび登場する、切り通しのシーン。
ここを青地がのぼってくる絵もいいし、小稲が立っている絵もいい。

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門付けの三人とそれを冷やかす客。門付けの先達を演じているのが麿赤児ということは気がつかなかった。

サラサーテ作曲のバイオリン曲であるツィゴイネルワイゼン。サラサーテ本人の声が入ってしまっているということだったが、果たして何が入っていたのだろうか。
そこにこの映画を読み解くヒントがあるのかなと思って観ていたが、そんなことはなかった。

 
総評としては、作品全体を包み込む、空気感だけが頭にのこり、内容はまったくと言っていいほど残っていない。
途中眠かったからというのもあるが、おそらく眠くなかったとしても、似たような感想だったのではあるまいか。

それこそが、本作の正統的な楽しみ方なような気もする。

最後に、英語版のパッケージデザイン。
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だいぶ雰囲気が異なる。

製作: 荒戸源次郎
監督: 鈴木清順
脚本: 田中陽造
原作: 内田百閒
撮影: 永塚一栄
美術: 木村威夫
音楽: 河内紀
出演: 原田芳雄(中砂) / 藤田敏八(青地豊二郎) / 大谷直子(園、小稲の二役) / 大楠道代(青地周子、青地の妻) / 麿赤児(門付けの先達) / 玉川伊佐男(甘木医師) / 樹木希林(キミ、ウナギを捌く料理人) / 真喜志きさ子(妙子、周子の妹) / 山谷初男(巡査) / 佐々木すみ江(青地家の女中) / 米倉ゆき(豊子、中砂と園の娘) / 木村有希(盲目の若い女) / 玉寄長政(盲目の若い男) / 夢村四郎(青地家の書生) / 江の島るび(女給) / 紅沢ひかる(看護婦) / 渡辺忠臣 / 間崇史 / 小田美知(おひさ) / 中沢青六(漁師) / 内山信子 / 堀妙子 / 石井まさみ / 川平京子 / 相倉久人(青地家の来客)
製作会社: シネマ・プラセット
配給: リトル・モア
公開: 1980年4月1日(日)
上映時間: 145分
 
【世間の評価】 ※2016.5.26時点
CinemaScape: 3.9/5.0 (239人)  
Yahoo! 映画: 4.01/5.00 (73人)
IMDb: 7.2/10 (484人)
 
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